ヒートショック

年間推定17000人以上が犠牲

日本のほとんどの住宅は、リビングと廊下や水廻り部分を比べると、約6℃~10℃の温度差があります。ヒートショックとは、そうした暖かい部屋から寒い部屋、またはその逆というように温度が急激に変化した際に、血圧や脈拍が上昇または下降して、心臓や血管に大きな負担をかけることです。ヒートショックが最も起きやすいのは冬場のトイレや浴室といわれています。浴室事故の70%は脳卒中などの循環器系障害によるもので、不幸にも入浴中にお亡くなりになる方は年間推定17000人以上。その多くは高齢者です。また、浴室事故が12月~2月の厳寒期に集中していることも特徴的です。

サーモグラフィで見た居室間の温度差

一般住宅のリビングから見た玄関ホール。
室温に5℃近くの差があることがわかります。

入浴中の心肺機能停止者数

出典:東京都健康長寿医療センター研究所(2011年)

  • 出典:東京都健康長寿医療センター研究所(2011年)
  • 出典:警視庁調べ(2016年)

夏と冬で入浴時の血圧変化は
どうちがうでしょうか?

グラフは、浴室の室温の違いによって入浴する際に血圧がどう変化するのかを調べたものです。夏は浴室温度25℃で、血圧の変化は緩やかでした。これに対して浴室温度10℃の冬は入浴前から洗浄後にかけて血圧が約40mmHgも上昇しました。浴槽につかると、一気に血圧が下降。入浴を終えて脱衣室に出ると再び血圧が上がりました。このような急激な血圧の上下動が血管に大きな負担をかけるのです。
この実験の協力者は最高血圧120mmHgの健常者でしたが、これがご高齢の方や、血圧の高い方の場合は血管が硬くなっていたり、脆くなっていたりするため、ヒートショックによる浴室事故の危険性はいっそう高まるでしょう。

出典:九州芸工大 栃原教授(医学博士)資料より

「お年寄りに一番湯はいけない」
その根拠は?

ご存じですか、「お年寄りに一番湯はいけない」という言葉。これは昔から言い伝えられてきた暮らしの知恵です。なるほど考えてみれば、一番湯のときはお湯が熱い状態ですが、浴室はまだ寒い。しかし、家族が何人か入浴した後の二番湯、三番湯なら浴室は良い具合に暖まっている一方、湯温は多少おさまっているはずです。
つまり「お年寄りにとって一番湯は負担が大きいから、二番湯か三番湯がちょうど良いですよ」という思いやりの警句だったのですね。ちなみに、入浴の際は40℃以下のお湯で「半身浴」をするのが身体に優しい入浴法だそうです。

ヒートショックを軽減するなら
全館床暖房が理想的

家の中の温度差を解消するためには、住宅の「全館暖房」が重要です。ちなみに、冬の暖房時だけでなく、夏の冷房時にもヒートショックを引き起こすものといわれています。外の寒さ・暑さの影響をなるべく受けないよう、家の中の温度を一定に保つためには、やはり住宅の構造は「高気密・高断熱」であることがポイントの一つとなります。そして、リビングなどの居室はもとより、玄関ホールや廊下、脱衣室、浴室、トイレまで、すべての空間の温度差が約2~3℃以内におさまっていることが望ましいといえます。さらに、ふく射熱方式による全館床暖房システムなどのように、家中が足元から暖かく、どこに行っても温度差のない暖房環境が理想的です。

全館床暖房なら、1階も2階も、ホールも洗面所も、そしてお風呂も、どこでも温度差は2℃以内です。

ヒートショックの心配な脱衣室、
浴室にも暖房設備を

日本では「浴室に暖房がない」のは一般的ですが、グラフのように他の国の多くは浴室に暖房設備(温風機、床暖房など)があります。温暖地域の戸建住宅などでも真冬の浴室は10℃以下になりますから、寒さにふるえながらお風呂場に入る人も少なくありません。冬場のヒートショックのことを考えれば、脱衣室や浴室に暖房設備を設置し、暖めておくことがポイントの一つとなります。特に、浴室の洗い場が冷たくて入浴の第一歩がつらいという方や、洗い場の床がヒンヤリするのが嫌でマットを敷いているという方などには、ぜひ洗い場に「床暖房」を設置することをお勧めします。