2026.09.01
物語が宿る、好きなものに囲まれた幸せな暮らし
Vol.01 ツレヅレハナコさん
文筆家・料理家
自分らしい暮らしを大切にしている方々に、長年使っている暮らしの愛用品を教えてもらう新連載がスタート。記念すべき第1回は、食と酒、台所道具をこよなく愛し、日本各地、世界各国を旅するツレヅレハナコさん。女ひとり、猫1匹と暮らす、数年前に建てたこだわりの一軒家を訪れると、そこには“好きなものに囲まれて暮らす幸せ”が詰まっていました。
毎日使う保存用器『キープスラッパー』は
“ノーストレス”で最高の相棒
「家にいるときの大半は台所にいる」というハナコさんは、料理を作るのも、食べるのも大好き。「これを使わない日は1日もない」と言って冷蔵庫から取り出したのは、美しくスタッキングされた透明の保存用器『キープスラッパー』。中には、ハナコさんが「作りおき未満」と呼ぶ、簡単に味付けした程度のシンプルな“仕込みおき”が整然と詰められています。
「友達のレストランで仕込み用に使っていて、ひと目で気に入り、“これどこの?”と教えてもらったのが始まりです。業務用でも使われていて、1個60円台。電子レンジも食洗機も、冷凍保存もOK。透明なので中身が一目瞭然なうえ、シンプルなデザインでスッキリ。特に省スペースで収納できるこの薄さが気に入っています」
若い頃は素敵なガラスの保存用器に憧れたけれど、年齢を重ねるにつれ、この手軽で肩肘張らないシンプルさがちょうどいいと言います。
「50歳を目前にして健康を意識するようになり、バランスよく少量ずつ食べる食習慣を心がけるようになりました。作りおきは手間がかかるうえ、途中で食べ飽きてしまうけど、ちょっとわかめを戻してしょうがと和えておくだけ、きゅうりを切って塩もみしておくだけなど、頑張りすぎない“仕込みおき”なら無理なく続けられます。
下ごしらえ程度の味付けだから、ご飯や麺にのせて、その日の気分で好きなように食べられる。どんなに疲れた日でもアレが冷蔵庫にあるから、家でごはんを食べようと思える。『キープスラッパー』はそんな食習慣をストレスなく続けるための名脇役。私にとって、もう欠かせない存在ですね」
シンプルな料理もおいしく!絶大な信頼をおく
『海人の藻塩』
年齢を重ねるとシンプルになるのは道具だけでなく、「料理も同じ」とハナコさん。それゆえ、調味料のおいしさが料理の味を左右します。特に塩は妥協できません。ハナコ家でそんな重大な任務を請け負い続けているのが、10年以上指名買いする『海人の藻塩(あまびとのもしお)』です。
「塩はいつでもすぐに手に入るものがよいなと思っています。これは近所のスーパーで発見しました。舐めてみると、海藻が入っているので旨みが強くてまろやか。100gで600円くらいするので、決して安い塩ではないのですが、基本の味付けはほぼこれです」
「作っているところを見てみたいと、広島県・呉にある上蒲刈島(かみかまがりじま)の製塩工場にも足を運んだところ、昔ながらの製法で大きな鍋でグツグツ煮ていて驚きました! 瀬戸内海に浮かぶ美しい島で、真摯にものづくりをする姿勢に感動し、安心して使い続けています」
野菜にかけると旨みが引き立ち、山椒やスパイスと混ぜて、天ぷらなどにつけるとグッと味が引き締まる。もちろん、おにぎりにしても最高とのこと。
心地よい時間を過ごしてほしいから…。『帆布バブーシュ』がお出迎え
ハナコさんの家は、一緒に仕事をする編集者やカメラマン、お酒好きな食いしん坊など、とにかく来客が多く賑やか。玄関先でお客様をお出迎えするのが、ビタミンカラーに元気をもらう赤と黄色のバブーシュです。
あるテレビ番組で工場が映り、「何やら素敵なものを作っているぞ」と気になって検索したところ、山形県河北町にある阿部産業株式会社の『帆布バブーシュ』と判明しました。明治時代に盛んだった稲わらを使った草履造りがスリッパ製造に発展し、地場産業として根付き、現在はスリッパの生産量日本一を誇るそう。
「こちらは帆布なのでハリがあり、中敷きの入った底もふかふかしてはきやすい。色は7色あり、小さめが赤、大きめが黄色とサイズで色分けして、来客用に使っています。洗濯機で丸洗いできるのもうれしいですね」
ハナコ家にあるものたちは、どれも「ほぅ、ほぅ」と思わず聞き入ってしまうエピソードを持ったものばかり。
たとえば、何気ないボウルや鍋ひとつをとっても物語がこんこんと溢れ出てきます。東南アジアの暑い国の生活雑貨店で見つけた名もなきアルミのボウルたち。ポルトガルのフリーマーケットで「亡くなった妻がよくこれで料理を作っていたんだよ!」と屈託のない笑顔で話すおじいさんから買った鍋。そこには一期一会の出逢いがあり、その物語を聞くだけで、まるで世界各地を旅したような気持ちになります。
「私はひとり暮らしなので、その分、誰にも邪魔されない、好きなものに囲まれて暮らす幸せを日々感じています。適当に買ったものって、結局大事にできなくて、愛着が湧かず、だからといって捨てることにも疲れてしまう…。
だからこそ、とりあえず買ってしまうものほど、頑張って選んだ方が長いお付き合いができるはず。流行っているから、高価だから良いわけでもなく、自分にとっての価値で選ぶことが大切だと思っています」
年齢を重ねるにつれ、自分にとって心地いいものが変わってきたというハナコさん。それでも、ものを選ぶときの気持ちはいつだって変わらないそう。自分の審美眼を大切にすれば、長く一緒に暮らせる愛用品に自然と出逢えるのかもしれません。
撮影/豊田朋子 取材・文/岸綾香
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