近年、新建材などから放散する化学物質が原因といわれる"シックハウス症候群"が問題になりました。新築住宅への入居後もしくはリフォーム後1年以内に発症するケースが多いようです。国内での患者数は1,000万人を超えたといわれ、なかでも在宅時間の長い主婦、子供の割合が多くなっています。シックハウスの主原因は、ホルムアルデヒド・VOC(揮発性有機化合物)などの化学物質です。ホルムアルデヒドは、建築材や壁紙の接着剤といった建材以外にも、家具やじゅうたん、書籍(印刷物)、履物などにも使われることが多い化学物質です。
シックハウス症候群は、ホルムアルデヒドなどの有害化学物質が室内に放散し、その汚染された空気にさらされ続けることによって発症するといわれます。目がチカチカしたり、鼻や喉が痛くなる、頭痛がする、ふらふらする、皮膚が痒くなる、疲れやすくなるなど、その症状は人によって様々です。しかし、ひどい場合には吐き気をもよおしたり、不整脈、手足のしびれ、呼吸器障害などを引き起こすことも確認されています。
シックハウスがここまで社会問題化してしまった背景には、有害化学物質の規制強化の遅れだけでなく、近年の住宅の高気密化に対して十分な換気対策が伴わなかったことがあると指摘されています。密閉された室内で有害化学物質を大量に吸い込んだり、また微量ながらも長期にわたって吸引し続けることで、ある日突然発症します。
一旦発症してしまうと、身近にあるすべての化学物質に反応してしまうことになり、日常生活に極めて大きな支障をきたしてしまいます。ですから、化学物質過敏症などのアレルギー疾患は、なってしまう前に"予防する"ことが何より重要なのです。
契機となったのは1973年のオイルショック後、欧米で原因不明のビル居住者の病気が多発、これをシックビル症候群として調べたところ、省エネルギー策でビルの換気を大幅に抑制したのが原因と分かったことによる。その後、デンマークの工科大学のメルブ氏とファンガー氏のグループによってシックビルディング・シンドロームという言葉が報告されている。日本では歯科医師の上原裕之氏が1995年に、医院付き新居で悩まされていた症状に「シックハウス症候群」と命名したことが始まり。シックハウス症候群という用語は日本の家というものに対する症候群ということで、現在では各国でも認知されている。
有害化学物質によるシックハウス症候群を予防するためには、(1)化学物質の発生源をできる限り減らすこと。併せて(2)適切な換気を実行することが不可欠です。ちなみに2003年7月1日に改正された建築基準法では、シックハウスの原因となる化学物質の室内濃度を下げるため、住宅などの建築物に使用する建材が規制され、換気設備の設置も義務付けられました。住まいづくりの際には、住宅メーカーがJAS及びJIS規格による「F☆☆☆☆」の付いた低ホルムアルデヒド部材を使っているかどうかを確認することも大切です。また、建材以外の家具や日用品などについては化学物質の含有量の表示対象になっていないケースも多いので要注意です。こうした日用品からも化学物質が放散する可能性が高いとして、改正建築基準法では、建材の規制に加えて、原則すべての建築物に機械式換気設備の設置を義務付けたのです。