暮らしにいいコト、
たくさん。

2026.11.02

本当にいいものを使い続けると、唯一無二の「一生もの」になる

Vol.03 コウケンテツさん

料理研究家

自分らしい暮らしを大切にしている方々に、長年使っている暮らしの愛用品を教えてもらう連載企画。第3回は、日常生活に寄り添った、手軽で作りやすいレシピが大人気の料理研究家・コウケンテツさんです。コウさんの愛用品はどれも10年以上使用しているという味わい深いものばかり。その共通点から、コウさんならではの「モノ選びのコツ」が見えてきました。

これひとつですくう、切る、返す、押さえる…機動力抜群の『アンティークのスッカラ』

韓国にルーツを持つコウさんが、「10年、いや
20年くらい愛用しているものも」と見せてくれたのは、アンティークのスッカラ。上京前、大阪で暮らしていた頃からの愛用品で、韓国の食卓では欠かせない存在だそう。

「韓国料理の主役はスープ。これ1本で、スープをすくったり、具材を切ったりすることができるので、スッカラは食卓の必需品です。最近はステンレス製が多いのですが、アンティークのものは職人さんがひとつひとつ真鍮を叩いて作っています。その手作りの風合いが魅力的で、そして何と言ってもこの薄さが使いやすいんです」

アンティークのものは窪みが浅く、薄いのが特徴。手作り感がありながら、凛としたフォルムが美しい。

コウさんはフライパンで焼いた豆腐をサッと手際よくスッカラでひっくり返します。

「めちゃくちゃ機動力があって、特に、朝の忙しいときのお弁当作りには欠かせません。スプーンほど窪みがなくて薄いので、豆腐など繊細に扱わないと崩れやすいものでも、スッと隙間に入り、ひっくり返すのも簡単。この薄さが、ありそうでなかなかないんですよね」

「この薄さがたまらない」というスッカラ。スープをすくうだけでなく、豆腐をひっくり返したり、チヂミを押し広げながら焼いたりするときにも大活躍する。

穴が空いても手放せない。使うほどに馴染む
『LIBECO』のクロス

さらに、「使いすぎて穴が空いちゃったけど、大好きなんです」と笑いながら、コウさんが見せてくれたのは10年以上愛用しているという
『LIBECO(リベコ)』のクロス。

『LIBECO』はベルギーリネンの最高峰といわれる老舗ブランド。最初は何気なく使い始めたが、使うほど手に馴染み、他のものを使っても結局これに戻ってしまうそう。

「ラインの幅や重なり方など、すべてが計算されていて美しい」とコウさん。仕事柄、クロスはたくさん使っているが、この2枚がいちばんのお気に入り。

「手拭き用として、エプロンの紐やベルトに掛けて、いつも僕の側にいる相棒です。煮沸してガシガシ洗濯しても、丈夫でへたらない。最初はもっとパキッとした濃い色でしたが、使うほどに味わいが出てしなやかになり、長年使い込んだからこそ出せるこの風合いも気に入っています」

リネン100%で使い心地は抜群。空いた穴にもコウさんの愛着を感じる。

「LIBECOに似たようなクロスはあるのですが、このシリーズは残念ながら廃盤になってしまって、もう二度と手に入らない。だからこそ余計に、愛着が湧きますね」

大判なので、テーブルに敷いても素敵。テーブルクロス代わりに使用することもあるそう。

駆け出し時代に背伸びして買った
『ARTS&SCIENCE』のコートは一生もの

秋や春も着られる軽やかな『ARTS&SCIENCE』のコートは、コウさんが駆け出し時代に出逢った思い入れのある1枚。

「表参道で打ち合わせをして、ふらりと立ち寄った『ARTS&SCIENCE』で出逢いました。当時、10万円くらいしたので“コート1枚でこの値段!”と、高くてびっくりしたのですが、店員さんに“一生ものですよ”とおすすめされて、その言葉に惹かれて購入を決意したんですよ
(笑)」

流れるような美しいラインは『ARTS&SCIENCE』ならでは。スタイリストのソニア・パークは使いやすさと心地よさ、機能美の調和を追求。厳選した上質な素材にこだわり、丁寧なライフスタイルを提案している。

15年ほど経った今、デザインも生地も古びることなく、コウさんがサッと羽織れば、たちまちサラリと心地よく馴染む。

「出張にもよく持って行き、ガシガシ着ていますが全然くたびれない。シャツと細身のパンツを合わせれば正統派な着こなしもできるし、下にパーカーやダボダボのワイドパンツを合わせてちょっとルーズに崩してもおしゃれ。冬はふわっとマフラーを巻いてもいい」

三重のステッチやボタンホールなど、細部までこだわりを感じる仕立てに。「背中のデザインも気に入っています」とコウさん。高い位置にタックが入っていて、バランスよく見える。

最近はファストファッションが主流になり、トレンドの移り変わりが加速する中、このコートを着ていると、「それどこのですか?」と、昔より今の方がよく聞かれるようになったそう。

「ベーシックなものは、飽きが来なくて普遍的。時代が変わっても、ずっと使い続けることができ、古びることがありません。そういったものをひとつひとつ大切に選んでいきたいですね」と、コウさんは笑顔を見せました。

「この家を買ったとき、“妻とどんな家にしていきたい?”と相談した際、10年、20年経ったときに自分たちが落ち着いて過ごせる家にしたいねと話しました。タイパ、コスパの時代だからこそ、長く使い続けることができ、使い続ける中でその過程も楽しめる。そういった自分たちにとって心地いいものを選びたいなと思っています」

本当に良いものは使うほどに、その人に馴染み、唯一無二の「一生もの」に育っていく。そんな大切なことを、コウさんの愛用品から教えてもらいました。

撮影/豊田朋子 取材・文/岸綾香

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